# 食品業界におけるAI活用の最前線

公開日: 2026-04-13 / 執筆者: 箕輪　旭 / カテゴリ: 業界別, 事例, 実行力, 施策立案（業務改革）

食品業界のDX推進担当者の方からよく聞く声のひとつに、「品質を落とすわけにはいかないから、AIや自動化には慎重にならざるを得ない」というものがあります。確かに、食品は消費者の口に直接入るものです。異物混入や品質のばらつきは、企業としての信頼失墜に直結します。その緊張感は、他の業界とは比べても大きいものでしょう。

しかし、この「品質への強いこだわり」が、AI活用の可能性を必要以上に狭めてしまっているケースも少なくありません。本記事では、食品業界特有の制約を前提としながら、AI活用を前進させるための2つの視点と、海外大手の具体的な事例をご紹介します。

## 「品質が下がったらどうするんだ」という壁

食品工場でAI導入の話を進めようとすると、現場から必ずといっていいほど出てくる声があります。「**機械に任せて品質が落ちたら、誰が責任を取るのか**」というものです。

実はこの懸念は、正しい問いです。食品製造における品質管理は、長年にわたって熟練した作業者の目と経験によって支えられてきた部分が大きい。原料の選別、異物の目視確認、製造ラインの状態判断。こうした業務には、マニュアルには書ききれない暗黙知が詰まっています。

だからこそ、「AIで全部置き換える」という発想が現場の抵抗を生みます。ここでの問題は、AIの是非ではなく、「どこに使うか」の設計が曖昧なまま導入が語られることにあります。

## 視点①　品質に直結しない業務から始める

AI活用を前進させるための一つ目の視点は、「**品質に直結しない業務を対象にする**」というものです。言い換えれば、品質が下がるリスクのない領域から手をつける、ということです。

食品工場の業務を見渡すと、品質とは直接つながっていない手作業は多くあるはずです。たとえば、需要予測、在庫管理、物流の最適化といった業務です。これらは製品そのものの品質には関わらないため、AI導入に対する現場の心理的なハードルが低いでしょう。

DX推進担当者として意識したいのは、「品質に関わる業務」と「品質に関わらない業務」を切り分けて整理することです。後者に絞ってAI活用を設計することは、**これまで培ってきた現場の経験をリスペクト**することでもあり、現場からの反発を避けながら技術導入を進めることができます。

## 視点②　今まで誰もできなかったことをAIでやる

二つ目の視点は、既存の業務をAIで置き換えるのではなく、「**これまで人間にはできなかったことを、AIで初めて実現する**」という発想です。

この視点が有効なのは、「仕事を奪う」という構図にならないことです。人間がやっていなかったことを新たにやるのですから、現場の反発が起きにくい。さらに、この発想でAIを活用すると、単なる効率化にとどまらず、品質の向上や新しい価値の創出につながる可能性があります。

たとえば、人間の目視検査に加えてAIによる異物検知も行う、あるいは膨大なデータの組み合わせを分析して新製品の素案を開発する、といった施策が、この視点の典型です。「AIが既存の仕事を脅かす」ではなく、「**手の回らなかった仕事を機械がやってくれる**」という文脈でDXを語ることができます。これは、現場の関係者を巻き込むうえで、非常に有効なフレームです。

## 事例：海外食品メーカーの取り組みから

### 視点①の事例：品質に直結しない業務の自動化

**Kraft Heinz｜需要予測とサプライチェーンの自律化**

Kraft Heinzは、複数の製品カテゴリーにまたがる大規模なサプライチェーンを抱えながら、需要予測の多くを担当者の経験と手作業に頼っていました。予測精度のばらつきが在庫の過剰・欠品を招き、廃棄コストや機会損失が慢性的な課題となっていました。この課題に対して、o9 Solutionsのプラットフォームを活用し、AIによる需要予測と発注の自動化を段階的に導入しました。その結果、サプライチェーン全体をAIが監視・判断する「自律型サプライチェーン」の構築を進め、2025年初頭には予測の自律採用率が48%に到達しました。その結果、2023年のサプライチェーン関連コストの削減額は約7億ドルに達したと報告されています。

参考：[https://www.supplychaindive.com/news/kraft-heinz-ai-automation-supply-chain/742476/](https://www.supplychaindive.com/news/kraft-heinz-ai-automation-supply-chain/742476/)

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**Unilever｜需要センシングによる在庫の最適化**

Unileverは190カ国以上で400以上のブランドを展開しており、地域ごとの需要変動への対応が長年の課題でした。従来の需要予測は過去の販売実績に基づくものが中心で、天候や消費者トレンドなどリアルタイムの変化を反映するのが難しく、在庫の過剰保有や欠品が頻繁に発生していました。そこで、POSデータ、天候情報、SNSのシグナルを統合した需要センシングプラットフォームを構築しました。ニューラルネットワークが1日に125億回の計算を実行し、310万通りの需要パターンを予測します。その結果、予測誤差が30%削減され、在庫保有コストは年間約3億ドル削減。Walmart Mexicoとの取り組みでは充填率98%・売上12%成長を1年未満で達成しています。在庫過剰による廃棄が減ったことで、サステナビリティ指標の改善にも寄与しています。

参考：[https://aiinthechain.com/2025/10/13/ai-driven-demand-sensing-lessons-from-unilever-and-amazon-for-the-supply-chain/](https://aiinthechain.com/2025/10/13/ai-driven-demand-sensing-lessons-from-unilever-and-amazon-for-the-supply-chain/)

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### 視点②の事例：今まで誰もできなかったことをAIで実現

**Kraft Heinz｜AIビジョンによるキュウリの全数検査**

Kraft Heinzの漬物工場では、入荷するキュウリの品質確認を目視に頼っていました。形状の歪み、傷、サイズのばらつきといった欠陥を人手でチェックするには限界があり、見落としによる不良品の混入や、ライン振り分けの精度にばらつきが生じていました。作業者の熟練度による差も課題でした。そこで、AIビジョンシステムを開発・導入し、入荷するすべてのキュウリをリアルタイムでスキャン。周囲長・長さ・曲がり・傷などを自動で判定し、品質基準に応じて適切な製造ラインへ自動振り分けします。同時に、サプライヤーへのフィードバックデータも自動生成されます。その精度は「トラック1台分のキュウリから欠陥品1本を見つけ出せるレベル」で、生産効率は12%向上しました。重要なのは、これが「人間の仕事を奪った」事例ではないという点です。人間には物理的に不可能だった全数検査をAIが担うことで、作業者は例外品の判断や設備の監視といった、より高度な業務に集中できるようになりました。また、蓄積された検査データはサプライヤーとの品質交渉にも活用され、原料調達の改善にもつながっています。

参考：[https://www.saca.org/2025/03/07/in-a-pickle-ai-increases-production-efficiency-at-kraft-heinz/](https://www.saca.org/2025/03/07/in-a-pickle-ai-increases-production-efficiency-at-kraft-heinz/)

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**McCormick × IBM｜AIによるフレーバー開発の加速**

調味料メーカーのMcCormickでは、新フレーバーの開発を少数の専門家による官能評価と試作の繰り返しに頼っていました。膨大な原材料の組み合わせのなかから最適なレシピを見つけるプロセスには時間がかかり、開発者が既知の原材料に頼りがちになるという構造的な限界もありました。新しい風味の発見よりも、既存レシピの改良に多くのリソースが費やされていました。そこで、IBMとの協業により、40年以上蓄積したレシピ・センサリーサイエンスのデータ・消費者の嗜好データなど数億のデータポイントを学習したAIを開発しました。AIが原材料の相互作用を予測し、人間の開発者が見落としがちな組み合わせを提案します。開発者はAIの提案をもとに試作・評価を行い、有望なものを絞り込む形でプロセスが変わりました。その結果、新製品の開発速度は最大3倍に加速しました。単に速くなっただけでなく、AIが提案する組み合わせには人間の経験則では発想しにくいものも含まれており、製品の多様性と独自性が広がっています。

参考：[https://ir.mccormick.com/news-releases/news-release-details/mccormick-company-and-ibm-announce-collaboration-pioneering-use](https://ir.mccormick.com/news-releases/news-release-details/mccormick-company-and-ibm-announce-collaboration-pioneering-use)

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## DX推進担当者が果たすべき役割

ここで紹介した2つの視点は、いずれも「AI導入の是非」を問うものではありません。「どこに、どう使うか」を設計するための考え方です。

品質への要求が高い食品業界だからこそ、「品質に関わるか関わらないか」という軸でAI活用を仕分けすることに意味があります。そして、人間にはできなかったことをAIで実現するという発想は、現場の反発を乗り越えるだけでなく、DXを「効率化のための取り組み」から「新しい価値を生み出す取り組み」へと位置づけ直す力を持っています。

DX推進担当者の役割は、全社的な大きなシステム導入を主導することだけではありません。「どの業務が対象になりうるか」を整理し、現場が「それなら試してみよう」と感じられる文脈をつくること。その一歩が、食品業界のDXを前に進める力になります。

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出典: スタディメーター株式会社 — https://studymeter.jp/insights/3ykv9yv3vj

執筆者プロフィール: スタディメーター株式会社　代表取締役。オンライン学習サービス「Udemy」にて、非エンジニア向けの分かりやすく実践的なIT講座がベストセラーとなり、 これまでに25万人以上を指導。さらに活動の幅を広げるため、2020年にスタディメーター株式会社を創業。 「挑戦したくなる世界」の実現を目指して、新しい一歩を踏み出したい人のサポートに取り組んでいます。
