# アナログな現場にデジタルを持ち込む - 農業・酪農の事例から学ぶ技術導入の考え方

公開日: 2026-04-14 / 執筆者: 箕輪　旭 / カテゴリ: 業界別, 事例, 実行力, 施策立案（業務改革）

DX推進担当者の方からよく聞く声のひとつに、「デジタルツールの話を聞いても、自分たちの**アナログな仕事の現場**にどう当てはまるのかがイメージできない」というものがあります。確かに、多くのデジタルツールはPCやクラウドの中で動くシステムとして設計されています。需要予測、在庫管理、帳票のデジタル化。これらは、オフィスや工場のような「管理された環境」を前提にしています。

この問いが最も鋭くなるのが、農業や酪農のような現場です。広大な土地の上で、天候や生き物を相手にしながら進む、本質的に物理的な営み。「デジタルで何かできそう」と思っても、どこから考えればいいかわからない、という感覚は当然です。

しかし見方を変えると、アナログな現場であるほど、デジタルが介入できる余地は大きいとも言えます。本記事では、農業・酪農の事例を通じて、物理的な仕事が中心の現場にデジタルを導入するための2つの視点をご紹介します。

## 物理的な仕事にデジタルを持ち込む難しさ

農業や酪農でデジタル化を進めようとすると、すぐに壁にぶつかります。牛は画面の中にいないし、作物はサーバの中に育つのではありません。現場で起きていることをデジタルの世界につなぐためには、センサー、カメラ、ロボットといった「**物理とデジタルをつなぐ装置**」が前提として必要になります。

加えて、農業や酪農の現場は広く、人手が少なく、ITに慣れた人材が限られているケースがほとんどです。「導入してみたけど、現場で使いこなせなかった」という失敗談も少なくありません。だからこそ、どこから始めるかの設計が重要になります。技術ありきで考えるのではなく、「今どんな仕事があるか」を起点に、デジタルが貢献できる領域を見極めることが、導入を成功させる第一歩です。

## 視点①　今までやっていた仕事を自動化する

一つ目の視点は、**現在人手でやっている仕事をデジタルや機械に置き換える**というものです。農業・酪農の現場には、毎日繰り返される労働集約的な作業が多くあります。牛の移動や放牧の管理、水田の水位確認と給水、農薬の散布といった作業がその典型です。

これらの仕事の共通点は、「判断の余地が少なく、ルールに従って実行するだけ」という性質を持っている点です。こうした作業は、センサーやロボットが最も得意とする領域であり、自動化によって作業時間を大幅に削減できる可能性があります。

自動化によって空いた時間は、より判断が必要な仕事、たとえば異常への対応や経営判断に充てることができます。担い手不足が深刻な農業・酪農において、自動化は「省力化」だけでなく、「**限られた人手をより重要な仕事に集中させる**」手段として機能します。

## 視点②　今まで誰もできなかったことをデジタルでやる

二つ目の視点は、これまで人間には不可能だったことを、デジタル技術によって初めて実現するというものです。

農業や酪農において、人間の感覚や経験には明確な限界があります。牛1頭ずつの体調変化を毎日全頭確認することは難しいですし、広大な農地の作物の状態を目で見て把握することも現実的ではありません。こうした「やりたいができなかった」領域に、センサーやAIが踏み込む余地があります。

この視点が重要なのは、既存の仕事を奪うのではなく、新しい価値を生み出すという点です。人間がやっていなかったことをデジタルが担うため、現場の抵抗が起きにくく、導入の成果も見えやすい。「効率化」ではなく「できることが増えた」という体験が、現場のDXへの姿勢を変えていきます。

## 事例：海外の農業・酪農現場から

### 視点①の事例：今までやっていた仕事の自動化

**Halter｜牛の放牧管理を仮想フェンスで自動化**

ニュージーランドを中心に展開するHalterが対象とした問題は、酪農・肉牛農家における放牧管理の労働負荷でした。牛の移動・追い込み・牧草地の区画管理は毎日発生する作業であり、広大な農地を抱える農家にとって大きな時間的・体力的負担となっていました。また、物理的な柵の設置・維持コストも課題でした。牛の首にGPS・センサー付きのソーラー充電式カラーを装着し、スマートフォンアプリから仮想フェンスを設定することで、牛の移動を音と振動で誘導するシステムを開発しました。「Cowgorithm」と名付けられたAIは70億時間分の牛の行動データで学習されており、個体ごとの特性に合わせた制御を行います。牛はおおむね2日以内にシステムへ適応し、99%以上の時間、設定範囲内にとどまることが実証されています。その結果、農家はスマートフォンから数回タップするだけで群れ全体を移動させることができ、毎日の放牧管理にかかる労働時間が大幅に削減されました。米国の牧場主だけで物理フェンスが不要になったことによる費用節減は約2億2,000万ドルに達するとされています。空いた時間は、個体の健康観察や繁殖管理など、より高度な判断を要する業務に充てられるようになっています。

参考：[https://www.inc.com/chloe-aiello/this-startup-just-raised-220-million-for-ai-cow-collars-and-an-industry-disrupting-cowgorithm/91321971](https://www.inc.com/chloe-aiello/this-startup-just-raised-220-million-for-ai-cow-collars-and-an-industry-disrupting-cowgorithm/91321971)

**Carbon Robotics｜レーザーによる自律除草**

農地の除草は、農業における最も労働集約的な作業のひとつです。広大な畑を人手で管理することは現実的ではなく、除草剤に頼る農家がほとんどでした。しかし除草剤の散布も人手と時間を要する上、コストと環境負荷の問題を抱えていました。米国Carbon Roboticsが開発した「LaserWeeder」は、AIカメラで作物と雑草をリアルタイムで識別し、30基のレーザーで雑草のみを焼却する自律走行ロボットです。農薬を一切使わず、24時間稼働が可能で、毎時最大20万本の雑草を99%の精度で処理します。米国Hungenberg Produce社では、除草にかかる人件費が年間70万ドルから30万ドルへと57%削減されました。農薬コストの削減と環境負荷の低減も実現しており、「除草という仕事そのものがなくなった」という感覚を農家にもたらしています。空いた人手は、作物の品質管理や収穫といった、より付加価値の高い作業に振り向けられるようになっています。

参考：[https://carbonrobotics.com/laserweeder](https://carbonrobotics.com/laserweeder)

### 視点②の事例：今まで誰もできなかったことをデジタルで実現

**John Deere｜AIによる雑草のみへのピンポイント農薬散布**

従来の農薬散布は、作物と雑草を区別せずに農地全体に散布するのが一般的でした。これは農薬の大量使用につながり、コストと環境負荷の両面で課題とされてきました。しかし、広大な農地を人手で確認しながら雑草だけに散布することは、速度的にも精度的にも現実的ではありませんでした。John Deereの「See & Spray」技術は、機械に搭載したカメラとAIが走行しながら毎秒約230㎡を解析し、作物と雑草をリアルタイムで識別します。雑草の位置を検知した瞬間にその箇所だけに散布するため、全面散布と比較して除草剤の使用量を大幅に削減することができます。2025年シーズンには全米500万エーカー以上で稼働しています。このシステムにより、除草剤の使用量は平均約50%削減され、大豆の収量は1エーカーあたり2.0ブッシュル増加します。農家にとっては農薬コストの削減に加え、環境への負荷軽減という新たな付加価値が生まれました。また、この技術によって「雑草の発生状況をデータとして蓄積・分析する」という、これまで存在しなかった業務が生まれており、農地管理の精度を継続的に高める基盤になっています。

参考：[https://roboticsandautomationnews.com/2025/11/05/john-deere-customers-use-autonomous-see-spray-technology-across-5-million-acres-in-2025/96266/](https://roboticsandautomationnews.com/2025/11/05/john-deere-customers-use-autonomous-see-spray-technology-across-5-million-acres-in-2025/96266/)

**Connecterra｜AIによる牛の疾病早期検知**

酪農の現場では、牛が体調不良になってから気づくことが多く、治療が遅れることで生産性の低下や最悪の場合は廃用・死亡につながるケースがありました。しかし、数十頭から数百頭の牛を毎日全頭細かく観察することは、物理的に不可能です。早期発見の重要性はわかっていても、手段がありませんでした。ConneterraのAIプラットフォーム「IDA」は、牛に装着したセンサーが反芻・活動量・歩行パターンなどの行動データを常時収集し、異常の兆候をAIが検知します。ワーゲニンゲン大学との共同実証試験（ベルギー・オランダ、約200頭）では、人間が目で見て気づくよりも平均2日早く健康異常を検出することが確認されました。その結果、治療が必要な日数が2018年に68%、2019年に77.5%削減され、抗生物質の使用量は50%減少しました。農家にとっての変化はコスト削減だけではありません。全頭を毎日モニタリングするという、これまで不可能だった管理が実現したことで、「問題が起きてから対処する」から「問題が起きる前に介入する」という仕事のあり方そのものが変わりました。

参考：[https://cordis.europa.eu/article/id/422608-efficient-greener-farming](https://cordis.europa.eu/article/id/422608-efficient-greener-farming)

## DX推進担当者が果たすべき役割

物理的な現場へのデジタル導入が難しく感じるのは、「何をすればいいか」がイメージしにくいからではないでしょうか。新しい技術の話を聞いても、自分たちの現場との接点が見えないと、一歩が踏み出せません。

そんなときに役立つのが、本記事で紹介した2つの視点です。「**今やっている仕事を機械に置き換えられないか**」「**今できていないことをデジタルで初めて実現できないか**」。この2つを軸に現場の仕事を見渡すと、取り組みの入り口が見つかりやすくなります。

農業・酪農の事例を取り上げましたが、この考え方は建設現場、物流の荷役、製造ラインの手作業など、物理的な仕事が中心のあらゆる現場に応用できます。アナログな現場ほど、デジタルが入り込める余地は大きい。まずはこの2つの問いを手がかりに、自分たちの現場を見直してみることが、DXの最初の一歩になるはずです。

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出典: スタディメーター株式会社 — https://studymeter.jp/insights/5kisufle2

執筆者プロフィール: スタディメーター株式会社　代表取締役。オンライン学習サービス「Udemy」にて、非エンジニア向けの分かりやすく実践的なIT講座がベストセラーとなり、 これまでに25万人以上を指導。さらに活動の幅を広げるため、2020年にスタディメーター株式会社を創業。 「挑戦したくなる世界」の実現を目指して、新しい一歩を踏み出したい人のサポートに取り組んでいます。
