# 金融業界における生成AI活用最前線 - 制約を乗り越えるアイデアと事例

公開日: 2026-04-20 / 執筆者: 箕輪　旭 / カテゴリ: 業界別, 事例, 生成AI, 実行力

金融業界のDX推進担当者の方からよく聞く声のひとつに、「機械に任せて間違いが起きたら、誰が責任を取るのか」というものがあります。この問いの背景には、金融業界特有の難しさが2つあります。法規制による**業務プロセスの制約**と、顧客情報を外に出せないという**セキュリティの制約**です。本記事では、この2つの難しさを正面から受け止めながら、AI活用を前進させるための視点と、海外大手の具体的な事例をご紹介します。

## 金融業界でAI活用が進みにくい、2つの理由

### 理由① 法規制による制約が大きい

金融業界は、あらゆる業務が法令や監督指針と結びついています。金融商品取引法、銀行法、保険業法、そして金融庁の各種ガイドライン。顧客への説明、審査の根拠、記録の保存に至るまで、事細かに定められています。

生成AIは誤りを出力する「ハルシネーション」を避けられないほか、推論過程もブラックボックスで、なぜその結論に至ったかを後から説明しにくい。この性質と、金融業務が求める「根拠を示せること」「記録に残せること」は、真正面からぶつかります。「機械に任せて大丈夫なのか」という現場の懸念は、担当者個人の慎重さというより、**業界全体を律する制度的な制約**に根を持っているのです。

### 理由② データを外に出すこと自体がリスクになる

もう一つの壁がセキュリティです。金融機関は、顧客の個人情報、資産情報、契約情報を大量に抱えています。これらは、本来であれば社外に持ち出されることを想定していないデータです。

一方で、生成AIの多くは外部のクラウドサーバー上で動作します。AIを業務に組み込もうとすれば、機密情報を自社の外に送ることになります。送信経路でのトラブル、設定ミスによる意図しない学習利用、ベンダー側のインシデント。どれか一つでも起きれば、情報漏洩はそのまま信頼の失墜につながります。「**クラウド上のAIに機密情報を渡してよいのか**」という問いに慎重にならざるを得ない理由は、AIそのものの性能ではなく、データを外に出さなければならない現代のAIの仕組みにあります。

この「法規制」と「セキュリティ」の2つの壁が重なり合うことで、金融業界のAI活用は慎重な設計を求められます。ただし、この壁を前にして立ち止まっている必要はありません。海外の先進事例を見ると、壁を正面から崩そうとするのではなく、設計によって上手に迂回している企業が増えています。

## 視点① AIに最終判断をさせない

AI活用を前進させるための一つ目の視点は、「**AIに最終判断をさせない**」というものです。

これは「AIを使わない」という話ではありません。正確性が求められる業務でも、人間が最終チェックする設計にすれば、AIを組み込めるという発想の転換です。コールセンターのオペレーターがAIのリアルタイムサポートを受けながら顧客と話す。保険の引受査定でAIがスコアリングをしたうえで、人間のアンダーライターが最終承認する。こうした「**Human-in-the-Loop（人間が判断ループの中に残る）**」という考え方が、グローバルな金融・保険業界の標準になりつつあります。

この設計によって、制度上の制約を乗り越えられるほか、現場の抵抗も下げることができます。「AIが決める」のではなく、「**AIが材料を整え、人間が決める**」。この使い方であれば、「機械に任せて間違いが起きたら」という問いに明確に答えられます。

## 視点② AIに渡すデータを設計する

二つ目の視点は、セキュリティの問題への向き合い方です。

「外部サーバーにデータを送りたくない」という懸念は正当です。しかし、解決策は「AIを使わない」だけではありません。「**AIに何を渡すかを設計する**」というアプローチがあります。氏名・口座番号・個人情報といった機密データをマスキングやトークン化（識別できない記号への置換）でぼかしたうえでAIに送り、出力を受け取ってから元のデータに戻す。こうした仕組みを設計すれば、個人情報をAIに渡すことなく、業務を自動化できます。

あるいは、AIが参照できる情報を社内文書だけに限定するRAG（検索拡張生成）を使えば、参照範囲を意図的に制限することもできます。「クラウドだから危ない」という発想から、「何を渡すかをコントロールする」という発想への転換が、セキュリティ問題を迂回する鍵になります。

## 事例：海外金融・保険大手の取り組みから

### 視点①の事例：人間が判断ループに残る設計

**Manulife｜「承認はできるが、否認はできない」という設計原則**

保険の顧客応対の現場では、オペレーターが複数ページにわたる約款を即座に参照しながら顧客に回答することが難しく、対応の質にばらつきが生じていました。

そこでManulifeは、数千ページの約款を瞬時に検索する「Knowledge Agent」と、通話の自動要約ツールを開発・展開しました。注目すべきはその設計思想です。CIOは「AIは承認のみ可能、否認はできない」と明言しており、AIは肯定的・定型的な判断のみを担い、ネガティブな判断や例外は必ず人間に戻す設計になっています。

この設計によって、「AIに任せて大丈夫か」という懸念への答えが、仕組みそのものに埋め込まれています。人間が判断すべき領域と、AIに任せてよい領域を切り分けることで、現場が安心してAIを使える状態を作り出した事例です。

参考：[https://thelogic.co/news/manulife-ai-life-insurance-maude/](https://thelogic.co/news/manulife-ai-life-insurance-maude/)

**Munich Re（alitheia）｜引受査定のSTP率を15%から50%へ**

生命保険の引受査定では、カルテをはじめとする大量の医療文書を読み込んで判断する作業が、ベテランのアンダーライターに集中していました。処理量が増えるほどボトルネックが広がり、判断のスピードと質の両立が難しくなっていきます。

Munich Reは、AIビジョンとNLPで医療文書を自動で構造化したうえで、シンプルなケースはAIがスコアリングし、複雑なケースは人間のアンダーライターに渡すという設計を導入しました。つまり「データや信頼度が低いケースは自動でフラグを立てて手動審査へ回す」という考え方です。

結果として、自動処理率は業界平均の15%から50%へと大きく向上し、75%のケースで48時間以内の引受判断が実現しました。アンダーライターの仕事が消えたわけではなく、複雑な例外案件に集中できる体制へと移行しました。

参考：[https://www.munichre.com/us-life/en/digital-solutions/alitheia.html](https://www.munichre.com/us-life/en/digital-solutions/alitheia.html)

### 視点②の事例：AIに渡すデータを設計する

**Ally Financial｜PIIマスキングパイプラインをオープンソース公開**

Ally Financialは、カスタマーケアの通話を自動要約するシステムを構築したいと考えていました。しかし、顧客の氏名・口座番号・社会保障番号といった個人情報を外部のAIに渡すことへの懸念がありました。

同社は「除去→トークン化→マスク→元に戻す」という4段階の処理を行うシステムを導入しました。個人情報を識別できない記号に置換したうえでLLMに送り、出力を受け取ったあとに元のデータへ戻す仕組みです。さらにこの設計をオープンソースとして公開し、金融・医療・小売の他社にも広がっています。

結果として、1コールあたり30秒から2分の要約時間短縮を実現し、要約の85%超が追加編集なしで使える品質を達成しました。注目すべきは、この成果を「顧客の個人情報を一切AIに渡すことなく」実現した点です。

参考：[https://www.ally.com/tech/ally-gives-back-to-langchain-ai-community-with-pii-masking-module/](https://www.ally.com/tech/ally-gives-back-to-langchain-ai-community-with-pii-masking-module/)

**Goldman Sachs｜Secure Compliance Gatewayで機密情報をフィルタリング**

Goldman Sachsは、全社員46,500人にAIプラットフォームを展開する際、「Secure Compliance Gateway」という層を間に設けました。この層が、機密情報の検知、データの匿名化、ポリシーチェックを自動的に実施します。すべてのAIインタラクションは監査ログに記録される設計です。

この仕組みによって、4万人を超える規模の全社展開が実現しました。機密情報の取り扱いに敏感な業界で大規模なAI活用が可能になった背景には、「セキュリティを確保しながらスケールする」という両立を、個々の運用ルールではなく仕組みそのものに埋め込んだ設計思想があります。

参考：[https://www.foxbusiness.com/technology/goldman-sachs-announces-firmwide-launch-ai-assistant](https://www.foxbusiness.com/technology/goldman-sachs-announces-firmwide-launch-ai-assistant)

## DX推進担当者が果たすべき役割

ここで紹介した2つの視点は、いずれも「AIの是非」を問うものではなく、「**どこに使い、どう設計するか**」を考える視点です。

法規制への対応は、Human-in-the-Loopの設計によって迂回できます。最終判断を人間に残す設計にすれば、説明責任や記録の保存といった要請にも応えられます。セキュリティの問題は、AIに渡すデータの設計によって迂回できます。個人情報をマスクしてから渡す、参照できる文書を社内に限定する、契約でデータの学習非利用を担保する。こうした設計の組み合わせで、クラウドを使いながらデータを守れます。

DX推進担当者の役割は、「AI導入の是非」を判断することではなく、「この業務は設計次第でAIを使えるか」を考え、現場がその設計を理解して動き出せる環境を整えることです。その一歩が、金融業界のDXを前に進める力になります。

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出典: スタディメーター株式会社 — https://studymeter.jp/insights/ki1edh02j

執筆者プロフィール: スタディメーター株式会社　代表取締役。オンライン学習サービス「Udemy」にて、非エンジニア向けの分かりやすく実践的なIT講座がベストセラーとなり、 これまでに25万人以上を指導。さらに活動の幅を広げるため、2020年にスタディメーター株式会社を創業。 「挑戦したくなる世界」の実現を目指して、新しい一歩を踏み出したい人のサポートに取り組んでいます。
