# なぜDXも生成AIも 現場に根づかないのか

公開日: 2026-05-30 / 執筆者: 箕輪　旭 / カテゴリ: 人材・組織, 戦略, 生成AI

こんな経験は、ありませんか。

-   鳴り物入りで新しいシステムを導入したのに、現場は「前のほうが良い」と言って、いつのまにか元に戻っている。
-   全社でAIを推進すると宣言した経営陣が、当の本人はメールを秘書に印刷させて読んでいる。
-   研修の説明会ではみんな熱心にうなずいていたのに、誰一人として使い始めない。

DXでも、生成AIの導入でも、新しい研修制度でも、このようなシーンは多くの会社でも見られます。そして多くの場合、その原因は「現場のやる気がない」「システムの出来が悪い」「うちの社員はITに弱い」といった言葉で片付けられます。けれど、本当にそうでしょうか。

この記事では、組織変革が定着しない理由をあらためて整理し、 効果的な変革を進めるために何を変えれば良いのか、考えてみます。

## 組織変革は「直接操作できないもの」を、間接的に動かすこと

組織変革を考える土台として、Burke-Litwinモデルという整理があります。これは、組織を構成する要素を12個に分け、その要素どうしの因果関係を描いた枠組みです。リーダーシップ、戦略、文化といった大きな要素から、構造、評価・報酬の制度、職場の風土、個人のモチベーションまでを並べ、何が何に影響するのかを地図のように示しています。

この12要素を眺めると、あることに気づきます。変革側が直接操作できるものと、そうではないものが混ざっているのです。そこで、これらの要素を「操作のしやすさ」で仕分けてみると、おおよそ3つの層に分かれます。

-   **直接操作できる**：組織構造（組織図・権限配分）、システム（評価・報酬・業務プロセス・導入ツール）、戦略とビジョン、人の配置（異動・任命）。これらは、経営や推進担当の判断で直接動かすことができます。
-   **間接的に操作できる**：管理職の振る舞い、スキルの育成、個人の短期的なモチベーション。これらは直接命令では動きませんが、研修や評価といった別のレバーを通じて、ある程度意図的に動かせます。ただし、レバーを当て続けないと効果は減衰していきます。
-   **直接は操作できない**：個人の長期的なモチベーションや価値観、組織レベルの風土・文化。これらは「変えろ」と言って動かせるものではありません。とりわけ風土や文化は、一人ひとりの行動やモチベーションの変化が積み重なって、はじめて間接的に動きます。

つまり**組織変革とは、直接操作できる「レバー」を操作して、直接操作できない「結果」を間接的に動かす営み**だと言えます。モチベーションそのものは握れないけれど、評価制度やツールという握れるレバーを動かせば、その先で行動が変わり、やがてモチベーションも動く。

変革がうまくいかないときに「**どこを押すと何が動くのか**」を探す。この、押せる場所を見つけて手を当てる、という発想がまず出発点になります。

## 2種類のレバー：「強制」と「動機」

変革を推進する側が直接操作できる「レバー」には、2種類があります。

ひとつは「**強制レバー**」です。業務プロセスの変更、ツールの導入、組織構造や評価制度の改定。これらの特徴は、本人の納得がなくても行動を変えることができます。旧来のシステムを止めて新しいツールに切り替えてしまえば、現場は新しいやり方でしか仕事ができません。退路を断つタイプのレバーで、即効性があります。

もうひとつは「**動機レバー**」です。研修、現場への語りかけ、経営会議で何を話題にするか。こちらは行動を強制できませんが、一時的なモチベーションや行動変容など、個人の「気持ち」をつくることができます。

そして、肝心なことは、どちらか片方のレバーを操作するだけでは、長期的な結果には繋がりにくいことです。

強制レバーだけで一気に行動を変えると、納得が置き去りになり、現場のモチベーションがどこかで限界を超えて急落します。逆に動機レバーだけだと、研修で一時的にやる気は出ても、行動を縛るものがないので、しばらくすると元の習慣に戻っていきます。撃ちっぱなしの研修が定着しないのは、これが理由です。

組織変革がうまくいかない企業は、このどちらかだけしか行っていないケースが多いと言えます。新しいシステムを導入して活用を促す「強制レバー」だけでは、そのツールをつかう必然的な「動機」がないので、効果的な活用が進まなかったり、大きな反発に直面したりまします。一方、DXに関する研修を実施する「動機レバー」だけでも、新しい行動を「行わなければならない」強制力がなく、行動が変わりません。すなわち、**変革を定着させるには、行動を変える「強制レバー」と気持ちを変える「動機レバー」という2種類の組み合わせが肝要**です。

## レバーで「誰を」動かすか考える

レバーの種類がわかったところで、次は、このレバーで誰を動かすのが効果的なのかを考えてみましょう。

ここで、組織を、経営層（役員クラス）・マネジメント層（中間管理職）・現場、という3つの層で考えてみます。実は強制レバーと動機レバーの効き方は、層によって変わります。

まず、**経営層には、強制レバー**がよく効きます。これは、会社が業務命令として行動を従わせやすい立場にいるからです。管理職は職務として会社の方針に従う立場ですから、本人が乗り気かどうかにかかわらず、「これが会社の方針です」という形で行動を変えさせることができます。制度を決め、方針を定め、構造を組み替える。こうした強制レバーは、この層に対して素直に効きます。

一方、**現場には、動機レバー**がよく効きます。現場の一人ひとりを、業務命令で細かく縛りきることはできません。人数も多く、日々の振る舞いのすべてを制度で統制するのは現実的ではない。むしろ、本人が「やってみたい」「このほうが楽だ」と納得して動くときに、現場はもっとも大きく変わります。若手が誰に言われるでもなく新しいツールを使い始めるのは、まさにこれです。研修やコーチングといった動機レバーが活きるのは、この層です。

そして、その中間にいる**マネジメント層には、両方のレバー**が効きます。会社からの強制も届くし、本人の納得でも動く。上からの方針を受けて行動を変え、同時に自分の言葉で現場に動機づけもできる。強制と動機の、ちょうど結節点にいる層だと言えます。

## どの層からでも、変革は始められる

ここで、変革には、上からしか始められないものと、どちらからでも始められるものがあります。新しい基幹システムの全社導入や組織再編のように、現場に決定権がない変革は、経営の意思決定から入るしかありません。一方で、生成AIの活用や日々の業務改善のように、現場が自分の裁量で試せる変革なら、下から始めることもできます。大事なのは、その変革で動かしやすいレバーと層はどこかを見極めることです。

**上から始めるルート**：まず**経営層に強制レバー**をかけ、新しい方針を課します。具体的には、経営ビジョンの刷新などの号令、組織横断のシステム導入などがあります。しかし、強制だけで上から方針を降ろすと、現場からの反発が起こります。ここで効くのが、**マネジメント層の動機レバー**です。間に立つ管理職に動機づけの研修などを行うことで、降りてきた方針を自分の言葉に翻訳し、現場が「やってみよう」と思えるように動機づけし直す。強制で始めて、マネジメント層で動機を足す。こうして二本のレバーが揃い、変化が現場に染みていきます。

**下から始めるルート**：まず**現場に動機レバー**で火をつけます。研修や、強制力のない便利ツールを導入すると、若手が新しいやり方を試し、「これは良い」という体験が生まれる。しかし、動機だけでは、その良いやり方は個人の裏技で止まり、組織の正式な手順に昇格しません。ここで効くのが、**マネジメント層への強制レバー**です。評価の仕組みを変えるなどの強制的な施策を通じて、管理職が現場の良い動きを拾い上げ「なければならない」状況をつくる。動機で始めて、マネジメント層で強制に乗せる。こうして二本のレバーが揃い、現場の火が組織の仕組みとして固定されます。

いずれのルートでも、中間管理職であるマネジメント層が要となります。上から来た強制に動機を足すことも、下から来た動機を強制に乗せることも、両方できる立場です。強制レバーから始めた場合は動機レバーを、動機レバーから始めた場合は強制レバーを適用する場所として、マネジメント層が変革の通り道になります。

## 「風土を変える」のではなく「個人を動かす」

組織を変えたいとき、私たちはつい、風土や文化そのものを直接変えようとします。けれど、そこに直接届くレバーはありません。

できるのは、操作できるレバーで個人の行動を動かし、その変化を積み重ねることだけです。そして、現場か、マネジメント層か、経営層か、どの層から変えていくのかを見極め、その層に効くレバーを選ぶことが、変革を設計するということです。研修も、評価制度も、ツール導入も、配置転換も、すべてはそのためのレバーのひとつにすぎません。どれか一つが特別なのではなく、どのレバーを、どの層に、どう組み合わせて当てるか。その設計に、変革の成否がかかっています。

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出典: スタディメーター株式会社 — https://studymeter.jp/insights/soy7y8e7b-t0

執筆者プロフィール: スタディメーター株式会社　代表取締役。オンライン学習サービス「Udemy」にて、非エンジニア向けの分かりやすく実践的なIT講座がベストセラーとなり、 これまでに25万人以上を指導。さらに活動の幅を広げるため、2020年にスタディメーター株式会社を創業。 「挑戦したくなる世界」の実現を目指して、新しい一歩を踏み出したい人のサポートに取り組んでいます。
