# 「できることからやろう」でDXは進まない - 実験する組織をつくる3つの仕組み

公開日: 2026-06-15 / 執筆者: 箕輪　旭 / カテゴリ: 実行力, アジャイル, 戦略

DXを推進するための「実験」の重要性は広く認知されており、実際に多くの企業の経営層が「どんどん挑戦していい」「失敗を恐れるな」と号令をかけています。それなのに、現場はなかなか動きません。

この現象を裏づけるデータがあります。[Agile Business Consortiumの調査](https://www.agilebusiness.org/resource/state-of-agile-culture-report-2023/)によれば、**経営層の91%が「自社は実験を奨励している」と答えている一方で、現場でそれを実感している人は35%**しかいません。この数字は、もう少し踏み込んで読み解く必要があります。経営層は当然、ごまかしているのではなく、本気で実験を奨励しているはずです。しかし、現場はそれを直接的に受け取れておらず、「**上は推奨と言うけれど、失敗したら結局怒られる**」と理解しているわけです。そして厄介なことに、これは現場の思い込みとは限らず、実際に失敗した人が責められる組織は少なくありません。現場からDXをはじめるためには、この認知のギャップを解消する必要があるのです。

本記事では、なぜ号令だけでは現場が動かないのかを整理したうえで、現場が安心して実験できる組織をつくるための3つの仕組みをご紹介します。

## なぜ号令だけでは動かないのか

以前の記事「[なぜDXも生成AIも 現場に根づかないのか](https://studymeter.jp/insights/soy7y8e7b-t0)」では、組織を動かす2つのレバー、「やりたくさせる」動機レバーと、「やらざるを得なくする」強制レバーについて紹介しました。組織を動かすためには2つのレバーを動かす必要がありますが、経営層の「実験しろ」という号令は、やる気を引き出そうとする動機レバーにあたります。その一方、多くの組織では、もう一方の強制レバーである評価制度が正反対を向いており、失敗が査定にひびく仕組みです。このままだと、口では「挑戦しろ」と言いながら、制度は現場に対して「失敗するな」と言い続けていることになります。

ここから見えてくるのは、必要なのは号令を追加することではなく、現場が安心して実験できる「仕組み」を整えることだということです。以下に、その仕組みを3つご紹介します。

## 仕組み① 評価制度に組み込む

1つ目は、強制レバーである評価制度を変えることです。

「失敗してもいい」と口で言うだけでは、いざ失敗したときに手のひらを返されるかもしれないと考えるため、現場はその言葉を信じません。先ほど確認したとおり、その警戒には実際に根拠があるからこそ、言葉ではなく制度として約束する必要があります。

具体的には、失敗を評価のマイナス対象から外したり、挑戦した回数や検証から得た学びを評価対象に加えたりといった設計が考えられます。こうした設計によって強制レバーの向きが変わり、**「失敗するな」から「挑戦しないほうが不利になる」**へと、制度が発する圧力の向きが反転します。号令と制度が同じ方向を向くことで、はじめて現場は動けるようになります。

## 仕組み② 実験のための予算を、あらかじめ確保しておく

2つ目は、予算の組み方を変えることです。

施策が出てきてから「これにいくら使うか」を都度判断していると、現場は毎回その投資の妥当性を問われることになり、一つひとつの施策に「結果を出さなければ」というプレッシャーがかかって、失敗を恐れる気持ちが消えません。

そこで、組織の年間予算を組む段階で、**最初から「実験のための予算」を費目として確保**しておきます。施策が生まれてから予算を探すのではなく、先に枠がある状態をつくっておくことで、現場はその枠の範囲内であれば自由に試すことができるようになります。

この仕組みは、現場と経営の両方にとって動きやすさを生みます。現場は施策ごとに毎回お伺いを立てる必要がなくなり、経営側も使ってよい上限があらかじめ決まっているためにリスクを取りやすくなります。青天井ではないという安心感が、経営の「実験を許す」という判断を支えます。

## 仕組み③ 費用対効果で意思決定しない

3つ目は、施策をやるかどうかの判断基準を変えることです。

施策の実行可否は、ふつう費用対効果（ROI）で判断されますが、ROIで判断する限り、投資に見合うリターンを示せるかどうかが問われ続けるため、現場の「結果を出さなければならない」というプレッシャーは消えません。これでは、現場はどうしても「当たる施策」を選びにいってしまいます。

そこで、判断基準を**「このゴールを目指すこと自体に意味があるか」と「仮に失敗しても損切りできるか」**という2つに置き換えます。

この2つで判断すれば、現場は「リターンを当てにいく」のではなく「仮説を検証しにいく」状態になれます。意味のあるゴールに向かっていて、かつ失敗しても撤退できるという2点さえ満たしていれば、結果が出なくてもそれは失敗ではなく、検証が一つ前に進んだことになるからです。

## DX推進組織が果たすべき役割

ここで紹介した3つの仕組みに共通するのは、現場のやる気を引き出すことではなく、**安心して失敗できる環境をつくる**という発想です。号令をかけること自体は簡単で、本当に難しいのは、その号令を裏切らない仕組みを整えることにあります。

そして、3つの仕組みは、それぞれ協力すべき相手が異なります。仕組み①の評価制度は人事と組んで設計する必要があり、仕組み②の予算は財務と組んで枠を確保し、仕組み③の判断基準は現場の意思決定者や担当者へのトレーニングを通じて浸透させていきます。

DX推進組織の役割は、自分たちが先頭に立って号令をかけることだけではありません。人事・財務・現場という社内のステークホルダーと協力しながら、経営の「実験しろ」と現場の「失敗できない」のあいだにある矛盾を、仕組みで埋めていくことです。その地道な調整こそが、「できることからやろう」で止まっていたDXを実際に動き出させる力になります。

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出典: スタディメーター株式会社 — https://studymeter.jp/insights/wisjauycii

執筆者プロフィール: スタディメーター株式会社　代表取締役。オンライン学習サービス「Udemy」にて、非エンジニア向けの分かりやすく実践的なIT講座がベストセラーとなり、 これまでに25万人以上を指導。さらに活動の幅を広げるため、2020年にスタディメーター株式会社を創業。 「挑戦したくなる世界」の実現を目指して、新しい一歩を踏み出したい人のサポートに取り組んでいます。
